石井院長コラム|人生は平凡でドラマチック

 

石井院長コラム

人生は平凡でドラマチック

The 99% You Never See — And Why It Matters


石井院長

徳川家康・人生論

あなたの物語

VIVANTというテレビドラマが人気だそうです。私は見てませんが、全話放送が完了したら、"一気見"でもしようかと思っています。ドラマに限らず、映画も小説も漫画も、ハラハラ・ドキドキ、笑えたり泣けたり、そういうの、誰もが大好きです。そこには人生の中で起こる出来事、人間模様が凝縮されています。限られた短い時間の中でそこから感動を味わいつつ疑似体験できるのがいいですね。

少なくともそこには退屈な時間はありません。もしそれらが平凡で退屈な、ただ長いだけのものなら、もはや誰もついてこないでしょう。我々がいつも興味を持って目にし耳にするストーリーというのは例外なくドラマチックな要素が凝縮されたものになります。

こういった観点からすると、私たちの日常って、多くの時間が平凡で退屈です。ドラマの世界と比べると、恐ろしくつまらない世界です。だから、あなたも一度は思ったことがあるでしょう。「私の人生って退屈でつまらないな…」って。しかし、振り返ってみると、あなたの人生でも幾度かはドラマチックな出来事があったはずです。ハラハラ・ドキドキ、笑った時もあれば、悲しくて泣いたとき、何かに感動している自分がいました。確かにそれらはあった。ただ、それらが永遠に続くことはありませんでした。気がつくとすでに終わっている出来事たち。努力して第一志望の会社に入った、猛烈なプロポーズをして彼女の心をなんとかつかみ取った、仕事を頑張って、ついに課長になった。そこまでに至る過程にドラマがあり、最後にクライマックスの時を迎えます。しかし、その心沸き立つような時間も間もなく終わってしまう。そうした記憶自体もまた、時間とともに色褪せていく。長い人生の時間からしてみると、それらは一瞬の出来事でしかありませんでした。

意外かもしれませんが、これに関しては歴史上の偉人と呼ばれる人たちとて同様です。ナポレオンや、カエサル、わが日本には織田信長、豊臣秀吉、徳川家康など数多くの英雄がいます。しかし、彼らも"平凡でありきたりな人生"を歩んできた我々と、さして変わりない人生を送っているのです。確かに彼らは、我々よりドラマチックな場面を多く経験したかもしれません。たとえば徳川家康・・・日本の歴史に大きな足跡を残した人物です。そのため、彼を題材にしたドラマも映画も小説も多く残されています。例えば山岡荘八の小説『徳川家康』は全26巻にもなる大作です。26巻ですよ。これに関しては、どんなに才能のある小説家とて、平凡な人生をそこまでの大作にすることはできません。26巻もの大作にするには、それ相応の多くの材料=人生ドラマが必要だからです。そのため、一般的に、家康の人生というのは「生涯にわたって劇的な出来事の連続」のようなイメージをもたれがちです。

しかし、ここで考えてみてください。この小説の一つの巻を読むにどのくらいか時間がかかるでしょう。…人によりますが、たとえば10時間かかるとします。すると単純計算で26巻すべて読むのに260時間となります。膨大な時間が必要です。しかし、見方を変えると、たかが260時間とも言えます。家康が1日あたり8時間活動をしたとしましょう。となると、小説の中で描かれる全260時間というのは、活動日数にすると260時間÷8時間で約32日間、つまり約1か月程度です。あれだけ活躍し、大事業を成し遂げた人物でも一生のうち、小説の材料として使えるようなドラマチックな出来事、その記録すべてを足し合わせて、たった1か月分にしかならないということです。家康は73歳4か月で生涯を終えています。となると、この1か月間というのは彼の全人生のたった0.1%(1か月÷73年間)に過ぎない計算になります。それでは、小説には描かれなかった残りの99.9%=73年3か月間はどうだったのでしょう。やはりドラマチックな時間を過ごしていたのか?いえいえ、そのようなことはありません。そのほとんどは、食事をし、トイレに行き、風呂に入ったり、その間、ぼーっとしていたり、あるいは気になる女中をいかに妾(めかけ)にしようかと思案を重ねたり、一方で奥さんの機嫌をとるために、どんなプレゼントがいいか考えたり、子供の教育のことで奥さんと言い争ったり、部下や、妾(めかけ)たちの間で日々起こる人間関係のトラブルに頭をなやませたり···。そう、どんな立派な人の人生でも、その多くの時間がこのような"ありふれた平凡なもの"で満たされているということなのです。もし仮に、徳川家康の人生を生まれてから亡くなるまでの73年の全期間、ビデオ録画したなら、どうでしょう。見たいと思いますか?それは、あまりに退屈すぎて耐えられないものでしょう。誰も見ようなどとは思わないはずです。

これは世界の英雄、ナポレオンにしてもカエサルにしてもアレキサンダー大王にしても同様です。つまりどんな歴史上の大人物とて、その99%以上の時間は平凡でとりとめもない時間を過ごしているということです。それは、まさにあなたと同じ。ただ、彼らの人生の中でのドラマチックな時間があなたより0.1%多かっただけのこと···かもしれない。

こうしてみると、人生って実に平凡で、退屈なもの。それが当たり前ということがわかります。そういった中、先に述べたように、あなたの人生だって、これまで、心に残る多くの出来事がありました。それをひとつひとつみると、それぞれ笑え、泣き、感動するドラマでした。短編かもしれないけど、感動的な小説にまとめあげることができるあなたの人生です。ただ、あなたは自分の人生について、小説のストーリーになどならない99%以上の平凡な時間を知っています。だから、「自分の人生は平凡でつまらないもの」とやはり思い込んでしまうのです。

あなたの人生はこれからも何十年もの間、続きます。やはりそのほとんどの時間は平凡でつまらないものとして過ぎ去っていくでしょう。しかし、その中で出会う人、物事を通して多くのドラマがあります。あなたが気づかないうちに、いつしか、それらを寄せ集めると、長編の大作になっているかもしれない。あなた自身にはやはりわからない。しかしそれがあなたの本当のストーリーなのです。

石井院長
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