日本経済とインフレ
~あなたのお金に対する信頼がカギ
Trust, Currency, and the Fragile Foundation of Money
最近の円安に対して、大規模な為替介入がありました。日本の財務省のみならず、米国財務省も協同するかたちで行われたとのこと。そもそも円安って、通貨『円』の価値が目減りしているってことです。それを何とかしようとする一種の"あがき"が為替介入。しかも日米協同で?そこまでする?…ちょっと考えるところがありました。
人間関係は信頼で成り立っています。親子はもちろんのこと、親類、地域、そして国も人々の信頼なくしては成り立ちません。お金もそうです。そもそもお金は何の価値もないただの紙切れにすぎません。しかし、それは政府が発行するもの。そこに皆が信頼を寄せ、価値を認めることで、一つの確固たる存在となり、それにより経済がうまく機能することになります。この政府の発行するお金に対する人々の信頼がなくなった場合、インフレが起こります。たとえば200円で1個買えたマクドナルドのハンバーガーも"円"の信頼がなくなると1個500円、さらに1000円、10000円…と値が上がります。信頼が全くなくなると1億円といえど所詮ただの紙切れ。バーガー1個も買えなくなる。それがインフレの怖いところです。逆に言うとインフレというのは"お金に対する人々の信頼度の指標"ともいえます。ここ数年ではベネズエラとかトルコなどで通貨の信頼がなくなり、極端な物価上昇、インフレがおこっています。現状、わが国では2-3%のインフレなので大きな問題ではありません。日本円というものが国民からしっかり信頼を得ているという結果でしょう。しかし今後はどうでしょうか。
1971年、アメリカのニクソン大統領が、金(ゴールド)とドルの交換停止を発表しました。それまで1ドル紙幣35枚で金1オンス(30gほど)との交換が保障されていました。つまりドルはただの紙切れではなく金(ゴールド)という数千年来の価値に裏打ちされた通貨でした。人々によるあいまいな信頼ではなく、確固たる歴史的価値に基づいた通貨。しかし、このことが米国政府の経済政策の足かせになってしまいます。金との交換を保証するということは、政府が発行するドル紙幣の量が政府の保有する金(ゴールド)の量に制限されてしまうからです。そのためもあり、この制度は1971年に終了。それ以降、米国は自由に?通貨発行ができる時代に突入することになったのです。お金が足りなければその分、通貨発行すればよい。具体的には国債という借金を通してお金を増やし、足りない分を賄えばよいということになります。もはや金(ゴールド)の束縛がなくなった。そのことで、いろいろやりくりができるようになったのです。たとえば、橋を作ったり道路や港を整備するにはお金が必要です。その際に国のお金が足りなくても国債を発行して必要な分を調達すればよい。そうすることで世の中、景気が良くなり、税収も増える。…良い考えです。
もっとも、この借金としての国債の発行は当初は慎重に行われていました。というのも、やはり借金は借金。いくら景気を刺激すると言っても、やりすぎると子や孫の後世につけをまわすことになる。だから最初のうちは、財政健全化と言って、国の借金の量は減らそう、としきりに言われてました。しかし、なんでもそうですが、時間がたつと慣れて感覚が麻痺していくもの。いつしか国の借金である国債の発行は当たり前になっていったのです。しかもコロナ禍などがあり、当時、各国ともコロナ生活支援金と称して国中にお金をばらまいたことは、あなたもご存じのとおりです。やはりその財源のほとんどが国債という借金でした。
私の高齢の母親などは今でも
「今度の総理大臣、給付金出してくれないかね~。給付金出してくれるなら私はいつでも投票するよ」
などと言っているのです。いたって平和で幸せな人です。たぶん、多くの国民も多かれ少なかれ同じようなことを心の中で思っているのかもしれない、などと考えたりするのです。
気がついてみると、米国債残高、つまり米国の借金残高は今や40兆ドル(6000兆円)。我が国においても同様、国債残高は1200兆円。年あたりの税金収入は70兆円ほどなので実に10年分以上の借金という状況です。もはや頭でイメージ不能なレベルです。
ここで怖いのが何と言ってもインフレです。インフレというのは冒頭でも言ったように"お金に対する人々の信頼度の指標"です。現状、どの国も借金まみれ。その額もそれぞれ相当なもの。もはやかつての金(ゴールド)のような価値の裏付けもない。はたして、人々の信頼をどこまでひきつけておくことができるのか。
最近、高市首相が骨太の方針を示しました。国内投資の強化に取り組み、強い経済成長を実現することを目指すとのこと。具体的には、半導体、創薬・先端医療、GX/DX、AI・量子技術など、日本の産業競争力を高める成長領域へ官民連携で大規模な投資を行うとしています。2040年度までに官民で累計370兆円超の投資を行うとのこと。かなりの投資額です。それとともに強い期待が持てる方針と言えるでしょう。ただ、官民共同の投資とはいえ、やはり、ここでも国の借金は免れない。もう借金は嫌だという人もいるでしょう。しかし、いまさら国の借金を減らして財政健全化を目指そうにも借金の額が巨大すぎてどうにもならない。しかも、そのような状態で借金を減らそうとすると、間違いなく景気が落ち込み、他国との競争に負けていくのは目に見えています。
もはや走り続け、突き進んでいかなくてはいけない我が国の国家経済戦略。借金漬けになって、一つ間違えれば極端なインフレを招きかねない。そういったインフレの影に常におびえながら、未来に向けて突進していかざるを得ない日本経済。最後の頼みは人々、あなたの日本円に対する"信頼"ということになるのでしょうか。

