石井院長コラム|医局での雑談から

 

石井院長コラム

医局での雑談から

A Morning Story from the Medical Office


石井院長

医局カンファレンス

家族のきずな

私が大学の医局に所属していたときのこと。医局では毎朝、外来が始まる前に医局カンファレンスという会議があります。そこで入院患者全員の病状経過報告とそれに対する議論を行います。

ある日、この医局カンファレンスが始まる前、早めに集まっていた数人が輪になって雑談していました。

いつものように真ん中に先輩のT先生がいます。
T先生は、医学部に入学するのに5年間浪人したという人生経験の持ち主。
そのせいもあってかどうかわかりませんが、温かみと何か人を引き付ける雰囲気を持っています。
また、優秀で、いろいろな医学セミナーの講師を頼まれる人。
だから大学の医局ではいつも彼の周囲に人が集まります。
そのT先生がその日の朝の家庭の様子を話してくれました。

・・・・・

T先生は奥さんと娘二人の四人家族。
次女のあいちゃんは幼稚園に通う5歳の活発で陽気な女の子です。
そんなあいちゃんが朝、なぜか元気がありません。
ご飯を食べて、「さあ、幼稚園に行く時間だよ」の声に、
普段なら「いってきまーす」と大きな声で走って出かけます。
なのにその日は様子が違います。
お父さん(T先生)が聞きます。

「あいちゃん、どうしたんだい?」

「あいちゃん、幼稚園に行かない」

「どうして?」

「ゆいちゃんがわたしのこと嫌いだって、いじわるするんだ」

「そうか、友達と喧嘩したのか・・・」

少しの沈黙の後、

「でも、いいな。あいちゃんにはたくさん友達がいるよね」

お父さんは続けて言うのでした。

「おとうさんにはね(悲しそうな顔をしながら)・・・友達、いないんだ・・・」

それを聞いてあいちゃんはしばらくお父さんの顔をじっと見つめていました。
いかにも「かわいそうにね」と言いたげな顔をして。
そして、少しの沈黙の後、元気に言いました。

「私、幼稚園にいくっ!」

そして、いつものように走って、幼稚園に行ったとのこと。

・・・・・

私には、子育て経験がないのですが、こういった話を聞くと家族っていいなと思います。平凡な日常の中にちょっとした緊張感があったりして。それによって余計家族のきずなが強くなるような。

でも、家族って、考えてみると、実に不思議なものじゃないですか。
そもそも、男性と女性という性質の異なる者どうしが結婚し、親と子という世代の全く異なる者どうしが同じ時代、同じ場所でいっしょになって日々の生活をおくっているわけですから。
少なくとも表面的には、性質の異なる者どうしが一つに集まったもの、それが家族なのですから。

あたりまえすぎて誰も意識していませんが、一家団らんとは、家族のメンバーそれぞれの気持ちがうまくバランスされて成り立つもの。平凡で何気ない日常というのは、このバランスを要求される一種の緊張感の上で成り立っているものと言えます。

あなたはどうですか?奥さん、子供たちとうまくやってますか?うまくやっているあなたはとてもバランス感覚の優れた人です。ひょっとすると、妻や子たちが日々出してくれる課題によって、気付かないうちにあなたの人間力が鍛えられたのかもしれません(^^)。

幸せな家庭生活ですか?・・・「そう言われりゃそうかもしれないけど、むしろ退屈かな?」・・・いえいえ、そのようなあなたこそ立派な人だと私は思います。

石井院長
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