【札幌の内科医監修】眠れない・疲れやすい原因と対策|不眠と疲労の仕組み

 

院長監修|患者向け医療解説コラム

眠れない・疲れやすいと
感じたとき、身体に何が
起きているのか

不眠と慢性疲労のしくみを正しく知り、
自分の身体と向き合うための手引き

監修:石井吉文 院長(内科・地域総合診療専門医)
最終更新:2026年4月
読了目安:約10分

監修医師
石
総合内科・地域総合診療
石井 吉文(いしい よしふみ)

南札幌クリニック 院長 | 日本内科学会認定医 | 地域総合診療専門医・指導医


01

「眠れない・疲れやすい」とはどういう状態か

「眠れない」「疲れやすい」という症状は、多くの方が一度は経験されると思います。
一時的なものであれば、生活リズムの乱れや一時的なストレスが原因であることも多く、自然に回復することもあります。
しかし、1か月以上続く場合や、日常生活に支障が出ている場合は要注意です。
そのような場合には、内科的・神経的・心理的な病気が背景にひそんでいる可能性があります。

「よくあること」「歳のせい」と思って放置してしまいがちですが、
まず自分の状態を落ち着いて振り返り、気になるようであれば気軽に医師に相談することが大切です。
この記事が、そのための一助になれば幸いです。

▎不眠には4つのタイプがあります

🌙

入眠障害

布団に入ってから30分〜1時間以上経っても眠れない状態です。頭の中で考えごとが止まらないと感じる方に多く、不眠のなかで最もよく見られるタイプです。

🌅

中途覚醒

夜中に何度も目が覚めてしまい、なかなか寝つけない状態です。加齢とともに増えやすく、お酒を飲む習慣がある方にも多く見られます。

⏰

早朝覚醒

予定より2〜3時間早く目が覚めてしまい、そのまま眠れなくなる状態です。うつ病のサインとして現れることもあります。

🔋

熟眠障害

時間的には眠れているのに、朝起きても疲れが残っている状態です。睡眠の「時間」より「質」の問題で起こります。

※ 慢性的な疲労感は不眠とセットで現れることが多いですが、睡眠とは別の原因で生じる場合もあります。

02

睡眠と疲労のしくみ

睡眠は、脳と身体を「修復・整理」するための大切な時間です。
眠っている間は、深い眠り(ノンレム睡眠)と浅い眠り(レム睡眠)が
約90分のサイクルで交互に繰り返されています。
それぞれが異なる役割を担っており、このサイクルが乱れると、
「十分な時間眠ったはずなのに疲れが取れない」という状態になります。

PHASE 1 | 寝入りばな(深いノンレム睡眠)

眠りに入って最初の深い眠りの時間帯に、成長ホルモンが集中的に分泌されます。このホルモンが筋肉・内臓の細胞を修復してくれます。この段階が十分に取れないと、肉体的な疲れが翌日まで残ります。前半の3時間が特に大切です。

PHASE 2 | 眠りの中盤(深い眠りと浅い眠りの繰り返し)

この時間帯に記憶の整理と感情のリセットが行われます。日中のストレスを「処理」するはたらきがあり、レム睡眠が不足すると、翌日にイライラしやすくなったり、気力がわかなくなったりすることがあります。

PHASE 3 | 起床前(浅い眠り・体温が上がり始める)

目覚めに向けて「覚醒ホルモン(コルチゾール)」が自然に増え、体の深部体温が上がり始めます。このリズムが乱れていると、起きたときにひどい倦怠感(寝起きのだるさ)が残りやすくなります。

PHASE 4 | 翌日への影響(悪循環に注意)

睡眠の質が下がると、疲労のもとになる物質(アデノシン)が翌日に持ち越され、夜になってもまた眠れなくなるという悪循環が起きます。この状態が2〜3週間続くと、慢性的な不眠に移行しやすくなります。

💡 医師の視点:
「疲れているのに眠れない」という状態は、交感神経(緊張・興奮の神経)が優位なまま、身体が休めていないサインです。
身体はくたくたなのに、神経が「まだ休むな」と命令し続けている状態です。
横になるだけでは回復しにくく、副交感神経(リラックスの神経)を意図的に刺激してあげることが有効です。
深呼吸・入浴・軽いストレッチなどを就寝前のルーティンに取り入れてみてください。

03

主な原因と背景

「眠れない・疲れやすい」の原因はひとつではなく、
複数の要因が重なっていることがほとんどです。
以下の6つのカテゴリを参考に、自分の状況を振り返ってみましょう。
🧠

自律神経の乱れ

緊張とリラックスを切り替える神経のバランスが崩れた状態です。長時間労働・慢性的なストレス・不規則な生活が主な原因です。頭痛・肩こり・動悸を一緒に感じている方に多く見られます。

💤

睡眠環境・習慣

就寝前のスマートフォン操作(光と情報刺激)、カフェインの摂りすぎ、バラバラな就寝時刻、寝室の温度・湿度のズレなどが原因になります。生活習慣の見直しで比較的改善しやすいカテゴリです。

😰

精神的ストレス・不安

仕事・人間関係・お金の不安などが続くと、脳が夜も「警戒モード」を続けてしまいます。うつ病や不安障害が背景にあるケースもあり、早めの対処が大切です。

🩺

身体の病気

甲状腺機能低下症・貧血(鉄分不足)・糖尿病・睡眠時無呼吸症候群・慢性疾患などが隠れていることがあります。血液検査などではじめてわかるものも多く、見落とされがちです。

💊

薬・アルコールの影響

降圧薬・ステロイド・一部の花粉症薬・アルコール(睡眠の質を下げます)・カフェイン入り飲料などが原因になることがあります。現在飲んでいるお薬の見直しで改善する場合もあります。

🏃

活動量の過不足

運動不足は眠りを浅くし、逆に激しすぎる運動や長時間のデスクワークは身体を慢性的に消耗させます。「動く量」と「休む量」のバランスが大切です。

💡 意外と見落とされやすい原因:睡眠時無呼吸症候群(SAS)
「いびきをかく」「日中に強い眠気がある」「夜中に何度もトイレに起きる」という方は、
睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
眠っている間に呼吸が一時的に止まるため、深い眠りに入れず、
朝から倦怠感・頭重感が続くことが特徴です。
自宅で行える簡易検査がありますので、気になる方はぜひ受診時にご相談ください。

04

札幌・北海道の気候と身体への影響

北海道の気候は本州と大きく異なります。
日照時間・気温の変化・湿度のちがいが、自律神経・ホルモン分泌・睡眠の質に直接影響します。
地域の環境を知ることも、自分の身体を守るための大切な一歩です。
🌨️ 冬の環境要因

日照不足がセロトニン・メラトニンのバランスを乱す

札幌では11月〜3月にかけて日照時間が大幅に短くなります。
太陽の光は脳内でセロトニン(気持ちを安定させるホルモン)をつくるために欠かせません。
日照が足りなくなると、セロトニンが減り、夜のメラトニン(眠りを促すホルモン)の分泌も乱れてしまいます。
北海道では「冬季うつ(季節性情動障害)」の方が多く、
冬になると眠れない・気力がわかない・眠りすぎる・食欲が増すといった症状が出やすくなります。
朝起きたら30分以内に明るい光を浴びる「光療法」がこの対策として有効です。

🌡️ 春・秋の気温変動

寒暖差が自律神経に大きな負担をかける

北海道の春と秋は、朝夕と日中の気温差が10〜15℃以上になることも少なくありません。
この急な温度変化は自律神経に大きな負担をかけます。
体温を調整しようと交感神経が常にフル稼働するため、
慢性的な疲れ・頭痛・首や肩のこり・眠りの浅さが現れます(これを「寒暖差疲労」と呼びます)。
こまめな重ね着で体温を管理し、入浴やストレッチで身体をほぐすことが予防・緩和に役立ちます。

🌸 雪解け・春先の変化

急に明るくなることで体内時計が一時的に混乱する

雪が解けて春になると日照時間が急激に延び、
冬の間にずれていた体内時計が一気にリセットされます。
その際、一時的に睡眠リズムが乱れたり、強い疲れを感じることがあります。
北海道ならではの「季節の変わり目の身体反応」のひとつです。
新しい季節のリズムに慣れるまで1〜2週間ほどかかることがありますので、無理をせず過ごしましょう。

05

セルフチェックリスト

以下の項目で、あてはまるものをチェックしてみてください。
チェックの数が多いほど、専門家への相談を検討するサインです。

今のあなたの状態を確認しましょう(複数選択可)

週3日以上、布団に入っても30分以上眠れないことがある

夜中に2回以上目が覚め、そのまま眠れないことがある

朝、起きた時点からすでに疲れを感じる

日中に強い眠気や集中力の低下を感じる

少し動いただけで疲れ、なかなか回復しない

気分が落ち込んだり、やる気が出ない日が続いている

頭痛・肩こり・だるさが慢性的に続いている

パートナーや家族からいびきを指摘されたことがある

冬になると特に気分や体調が落ちやすい

こうした状態が1ヶ月以上続いている

このチェックリストは参考用です。診断を行うものではありません。

06

医師に相談すべきサイン

軽い不眠や疲れは、生活習慣を整えることで回復することもあります。
しかし、以下のような症状がある場合は、自分で解決しようとせず、
早めに医療機関を受診してください。

次の症状がある場合は受診をお勧めします

以下のような症状が続く場合は、早めにクリニックへご相談ください

▸

眠れない・疲れやすい状態が1ヶ月以上続いている

▸

眠っている間のいびき・無呼吸・脚のむずむず感がある

▸

体重が急に増えたり、減ったりしている

▸

動悸・息切れ・胸の圧迫感が出てきた

▸

強い気分の落ち込みや、死にたいという気持ちが浮かぶことがある

▸

市販の睡眠補助薬や疲労回復サプリを使い続けても改善しない

▸

仕事・家事・日常生活に支障が出るほど症状が重い

▸

手足のしびれ・むくみ・口の渇き・頻尿なども同時に出ている

🏥 どの診療科に行けばいい?
迷ったら、まず内科へお越しください。内科で初期の評価を行い、必要に応じて睡眠外来・心療内科・神経内科・呼吸器内科などへご紹介します。「どの科に行けばよいかわからない」という場合も、内科が入り口になります。
📋 持参するとよいもの
お薬手帳・直近の健康診断の結果・症状をメモした紙。「いつから」「どんな状況で」「どのくらいの頻度で」という情報が特に役立ちます。

07

日常でできるセルフケア

医療機関での治療と並行して、または予防として、
毎日の生活の中で実践できる工夫があります。
すべてを一度に始める必要はありません。
続けやすいものを1〜2つ選ぶことが、長続きのコツです。
☀️

朝の光浴

起床後30分以内に窓際や屋外に出て、自然光を浴びましょう。体内時計がリセットされ、夜のメラトニン(眠りのホルモン)が整います。曇りの日でも屋外の光は効果があります。

🛁

就寝前の入浴

寝る1〜2時間前に、38〜40℃のぬるめのお湯で15〜20分ゆっくり入浴しましょう。入浴後に体の深部体温が下がることで、自然な眠気が促されます。毎日シャワーだけの方は特に効果を感じやすいです。

📵

寝る前のスマホを控える

スマートフォン・パソコンの使用は、寝る60分前には終わらせましょう。画面の光(ブルーライト)と情報の刺激が脳の覚醒を続けさせます。夜間モードにして画面を暗くするだけでも効果があります。

⏰

起床時刻を毎日そろえる

眠れなくても、毎日同じ時刻に起きることが体内時計を整える最も効果的な方法です。「週末に寝だめする」と体内時計がずれてしまい、月曜日の朝がつらくなります。

🌡️

寝室の温度・湿度を整える

夏は25〜26℃、冬は18〜20℃・湿度50〜60%が快眠に適した環境です。北海道の冬は暖房で空気が乾燥しやすいので、加湿器の活用をお勧めします。

🍵

午後のカフェインを控える

カフェインは飲んでから5〜7時間ほど効果が続きます。午後2時以降のコーヒー・緑茶・エナジードリンクは控えると、就寝時の覚醒が和らぎます。デカフェへの切り替えも効果的です。

💡

「眠れないから早めに横になる」は逆効果になることも眠れないまま長くベッドにいると、脳が「ベッド=眠れない場所」と覚えてしまいます(条件付け不眠)。
眠くなってからベッドに入り、眠れなければ一度ベッドから出るという「刺激制御法」は、
睡眠の認知行動療法(CBT-I)で有効とされている方法です。
薬に頼る前に、ぜひ試してみてください。

08

運動・リハビリテーションの視点から

「疲れているから動けない」という状態になりやすいのが、慢性疲労のつらいところです。
しかし医学的には、無理のない範囲での身体活動こそが、睡眠の質と疲労回復力を高める
最も有効な方法のひとつとされています。
大切なのは「強さ」よりも「継続すること」と「自分に合った負荷を選ぶこと」です。
🏥 リハビリテーション医学の視点

「身体の使い方を整える」という考え方

リハビリテーション医学は、骨折や手術後の回復だけを対象とするものではありません。
慢性的な疲れ・不眠・自律神経の乱れで「身体の使い方のクセ」が崩れた方にも、
専門的な運動療法・呼吸の指導・姿勢の見直しを通じて、
身体全体のバランスを取り戻すアプローチが有効です。

たとえば、長時間のデスクワークによって体幹の力が落ちていたり、呼吸が浅く(胸だけで呼吸している)なっていたり、筋肉が慢性的に緊張して血流が悪くなっていたりすることが、疲弊感の原因になっていることがあります。

🚶 有酸素運動(ウォーキング)
20〜30分・週3〜5回を目安に行いましょう。夕方〜就寝の3時間前に行うと、体の深部体温が下がりやすく眠りを促します。北海道の冬は、室内自転車や水中ウォーキングも効果的です。
🧘 腹式呼吸(お腹を使った深呼吸)
リラックスの神経(副交感神経)を活性化する、最も手軽な方法です。4秒で息を吸い、8秒かけてゆっくり吐く。寝る前に5〜10分続けると効果的です。
🤸 ストレッチで筋肉のこりをほぐす
肩甲骨まわり・股関節・ふくらはぎのストレッチは、血流をよくして体の深部体温を下げる助けになります。就寝前のルーティンに取り入れると、より効果を感じやすくなります。
💪 体幹・姿勢トレーニング
猫背や前かがみの姿勢は呼吸を浅くし、疲れやすい身体をつくります。基本的な体幹トレーニングは「疲れにくい身体の土台」になります。
🌱 慢性疲労症候群(ME/CFS)の可能性がある方へ
「少し動いただけで数日間動けなくなる」という方は注意が必要です。
これは慢性疲労症候群(ME/CFS)の特徴的な症状(労作後症状悪化・PEM)の可能性があり、
この場合は無理に運動することで症状が悪化することがあります。
自己判断で運動を始めず、専門医を受診したうえで
「活動と休息のバランス調整(ペーシング)」を基本にした管理を行うことが大切です。

09

院長からのひとこと・まとめ

この記事でお伝えしたかったこと

「眠れない・疲れやすい」という症状は、
「よくあること」「年のせい」として見過ごされがちですが、
身体が「助けて」と発しているサインかもしれません。
背景には、生活習慣・自律神経の乱れ・心理的なストレス・身体の病気など、
さまざまな原因が複雑に絡み合っています。

まずは今の自分の状態を落ち着いて振り返り、セルフチェックで傾向をつかんでみてください。
できるセルフケアを少しずつ取り入れながら、
改善しない場合や気になる症状がある場合は、どうか一人で抱え込まず、早めにご相談ください。

☀️朝の光浴・起床時刻をそろえること・入浴ルーティンから始めてみましょう
🚶軽い有酸素運動と腹式呼吸は、薬に頼る前に試みる価値があります
🏥1ヶ月以上続く場合は、内科への受診をためらわないでください
🌨️札幌の冬は光不足に注意。季節の変わり目は、身体に優しく過ごしましょう

監修医師プロフィール

石井吉文 院長より

「なんとなく体の調子がすぐれない」と感じたとき、
どうか一人で抱え込まず、まずお気軽にご相談ください。

石
院長監修
石井 吉文(いしい よしふみ)

南札幌脳神経外科 院長
日本内科学会 認定医
地域総合診療専門医・指導医

この記事は、患者さんが自身の健康状態をより深く理解し、
適切なタイミングで医療機関を受診できるよう、
中立的な立場で作成した患者向け教育資料です。
診断・治療の代替となるものではありません。

【免責事項】
本記事は医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。
記載されている情報は執筆時点の医学的知見に基づくものであり、
最新の情報と異なる場合があります。
症状が続く場合・不安を感じた場合は、必ず医療機関を受診してください。

参考資料・ガイドライン

  • –日本睡眠学会「睡眠障害の診断・治療ガイドライン」2023年版
  • –厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2023」
  • –American Academy of Sleep Medicine (AASM) Clinical Practice Guidelines for Chronic Insomnia
  • –日本リハビリテーション医学会「慢性疲労に対する運動療法の考え方」
  • –Morin CM, et al. "Cognitive behavioral therapy for insomnia." Lancet, 2022
  • –Walker, M. "Why We Sleep" (2017)(邦題:「睡眠こそ最強の解決策である」)


本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療行為を行うものではありません
症状が続く場合や不安を感じた場合は、必ず医療機関を受診してください。
監修:石井吉文 院長(日本内科学会認定医・地域総合診療専門医)
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