言語療法(ST)のご案内
言語療法(Speech Therapy:ST)は、「ことば」や「飲み込み」、そして「記憶・注意」などの脳の働きをサポートするリハビリです。脳卒中や神経疾患、ご高齢による機能の低下などで、話す・聞く・食べることに不安を抱えている方を対象にしています。
飲み込みのリハビリ(嚥下訓練)
嚥下(えんげ)とは、口から食べ物を飲み込み、のど・食道を通って胃に運ぶ一連の働きです。うまくいかないと「むせ」「食後の咳や痰」「体重が減る」「繰り返す肺炎」などにつながることがあります。私たちは「できるだけ口から安全に、おいしく食べること」を目標に、次のようなサポートを行います。
- 食事の工夫:食べ物のやわらかさや大きさ、水分にとろみをつけるなど調整します。
- 姿勢と食具の工夫:飲み込みやすい姿勢を指導し、注ぎ口付きコップや深めのスプーンなどを活用します。
- トレーニング:舌・頬・口唇・のどの運動、発声や呼吸の練習、咳を強くする練習などを行います。
- 食事環境づくり:一口の量や食事の配置、時間の工夫などで集中できる環境を整えます。
- 口腔ケア:歯磨きやうがい、保湿を行い、誤嚥性肺炎を防ぎます。
- 検査と確認:必要に応じてX線検査(VF)で飲み込みの様子を見える化し、最適な方法を一緒に考えます。
話す・聞く力を支えるリハビリ(言語訓練)
言葉が出にくい、発音しづらい、声が出にくい、言葉が理解できないといった症状に対して、「会話する喜び」を取り戻せるよう練習を行います。
- 発音練習:舌やくちびる、あごを動かし、聞き取りやすい音を出す練習をします。
- 呼吸・声のコントロール:お腹を使った呼吸で、声の大きさや高さ、話す速さを整えます。
- 言葉を思い出す練習:言葉を分類したり言い換えたりしながら、会話につなげていきます。
- 聞く力を伸ばす練習:話の指示や要点を理解できるように練習し、表情やジェスチャーも手がかりにします。
- 読み書きの練習:ひらがなや漢字の再学習、音読やメモ、署名や短い文章作成に取り組みます。
- 補助的な手段(AAC):ジェスチャーや写真カード、会話用ボード、タブレットのアプリなども使って伝えやすさを助けます。
記憶や注意を支えるリハビリ(高次脳機能訓練)
「覚えにくい」「注意が続かない」「段取りが苦手」「状況に合わせた切り替えが難しい」などの症状に対し、機能訓練と代償手段(補う工夫)を組み合わせ、暮らしの困りごとを具体的に解決します。
- 記憶の練習:単語や場所、予定を思い出す練習をします。日記やメモを活用し、繰り返し復習して記憶を定着させます。
- 注意力の練習:文字探しや音に反応する課題、同時に2つのことを行う練習で、集中力や注意の持続を高めます。
- 考えを切り替える練習:作業を順序立てて行ったり、優先順位をつけたり、ルールが変わったときに柔軟に対応する力を養います。
- 反応を抑える練習:不要な動作や言葉を止めたり、間違いに気づいて修正できるようにします。
- 空間認知の練習:時計の絵を描いたり図形を写したり、カードの位置合わせや地図を使った課題で、空間を把握する力を伸ばします。
- 補助手段の活用:カレンダー、タイマー、スマホのアラームなどを使い、忘れやすさを補う工夫を一緒に考えます。
ご家族とチームで支えるサポート
言語療法(ST)は、ご本人だけでなく、ご家族や介護される方と一緒に取り組むことで、より大きな効果が出ます。私たちは、日常生活で役立つ工夫を一緒に考え、共有していきます。
- 食事のサポート:むせた時の対応方法や、食べ物の形・やわらかさの調整、食後の姿勢などを確認します。
- 会話のコツ:ゆっくり・短く・一つずつ伝える、選択肢を示す、写真や文字など視覚的な手がかりを使う工夫を紹介します。
- 記憶を助ける工夫:予定表やホワイトボード、スマホのアラーム、家のよく見える場所への掲示などで、生活を支えます。
まとめ
言語療法(ST)は「食べる」「話す」「考える」を支える専門リハビリです。安全に食事ができること、家族と自然に会話できること、予定を立てて行動できることは、生活の質(QOL)に直結します。状態や目標は一人ひとり異なりますが、評価に基づくオーダーメイドの計画で、少しずつ確実に前進していけます。

